がん細胞のエネルギーを制御し, 増殖を抑える方法を明らかに!

がん细胞の増殖に必要なエネルギーを阻害するメカニズムを解明しました。
従来のがん治疗薬は、细胞を増殖させる分子の働きを抑える仕组みですが、
今回の研究では、がん细胞の生存の仕组みそのものに着目し、増殖を抑制する方法を明らかにしたのです。
がんの种类を问わず効果を発挥し、薬剤耐性を诱导しない薬の开発に繋がればと期待しています。
がん细胞特有のエネルギー代谢に着目。これを司る遗伝子を特定しました。
私の研究テーマは,「がん」の病態を明らかにして標的にすべきところを決め,創薬に貢献することです。
現在,臨床では主に分子を標的にした抗がん剤が使われていますが,私たちが研究しているのは,分子ではなく,がん発症に繋がる遺伝子を攻撃するもの。
タンパク質を合成する「メッセンジャー搁狈础※1」の中からがんの発症や病态に関与するものを,マイクロ搁狈础という短い核酸を用いてつぶす「核酸医薬」と呼ばれるものです。
今回の研究で,私はがん细胞特有のエネルギー代谢に着目し,これを制御する遗伝子を特定しました。そもそも,细胞がエネルギーを得る方法には,「解糖系※2」と「クエン酸回路による電子伝達系」という2つの仕組みが存在します。
正常な細胞では,酸素を使うことで効率的かつ多くのエネルギーが得られる後者を使いますが,がん細胞では,効率は悪いものの,より早くエネルギーを得られ,さらに増殖に必要な核酸の材料が生じる「解糖系」に偏ったエネルギー代謝をしています。
この現象は「ワーバーグ効果※3」と呼ばれるもので,がん细胞では「笔碍惭2」というタンパク质がたくさん発现することで,解糖系を维持?活性化していることが分かっています。
て世界的に権威のある科学誌『翱苍肠辞迟补谤驳别迟』
にて学术雑誌论文として公开された
今回,私たちはこのPKM2の発現を上昇させているタンパク質「PTBP1」を特定することに成功しました。
これにより,がん細胞のエネルギー代謝のメカニズムが明らかになりました。
さらに,PTBP1がコードされたメッセンジャー搁狈础を,特定のマイクロRNAを用いて選択的に分解すれば,がん細胞の増殖を顕著に抑えられることも突き止めました。
これが核酸医薬として実現すれば,分子を標的とした薬と違い,薬剤への耐性が出ないため,今後の創薬の主流になるだろうと考えています。
がん细胞の研究を通じて 生命のメカニズム解明に迫りたい。
がん細胞のワーバーグ効果は,がんの増殖や生存,エネルギー獲得の根幹に関わるものです。そのため,ワーバーグ効果を破綻させる今回の発見は,あらゆるがんにおいて効果が期待できる上,薬剤の耐性も 出現しにくいことから,創薬に向けて大きな可能性を秘めています。すでにPTBP1がコードされたメッセンジャーRNAを分解できる低分子のRNAを作製済みで,今後は臨床応用に向けて研究を加速させていく予定です。ただ,血液中にはRNAを溶かしてしまうタンパク質が存在し,直接投与をしてもすぐに分解されてしまうのが課題です。そのため,がんの病巣に薬を届ける搬送システムの確立も目指していきたいと考えています。
私が研究する上で大切にしているのは,サイエンスへの兴味を持ち続け,常に头の中で疑问を持ち続けることです。これからも科学への情热を絶やすことなく,究极の生命力を持ったがん细胞を通じて,「生」のメカニズムを研究し続けたいと思います。
キーワードを解説します。
核酸の一種であるリボ核酸(Ribo Nucleic Acid) の略で,動植物の細胞の核内や細胞質の内部,ウ イルスなどに存在します。「メッセンジャー搁狈础」 とは,DNAからコピーした遺伝情報を基にタンパ ク質を合成するRNAのこと。「マイクロRNA」と は,遺伝子の発現を抑制する効果を持つ小さな RNAで,近年の研究により,がんの発症と深い関 わりがあることが明らかになってきています。
がん細胞の多くが解糖系に偏ったエネルギー代謝
を行っています。その理由はいまだはっきりと解
明されていないものの,
①クエン酸回路と比べて反応の段阶が少なく,エネルギーを早く作れる
②酸素を必要としないため,がん细胞にダメージを与える活性酸素が出ない
③解糖系の中间代谢产物が,がん细胞の分裂に必要な核酸の材料になっている
などが考えられています。
ドイツ人生理学者のオットー?ワーバーグに よって報告された,がん細胞の増殖,生存,エネ ルギーの獲得に有利に働く仕組みのこと。酸素 がたくさんある場合,通常の細胞では,「クエン 酸回路」という効率的なエネルギー代謝を行い ますが,酸素が十分にある状態でも,がん細胞 では効率が悪い「解糖系」に偏ったエネルギー 代謝が行われていることを明らかにしました。